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手足口病とは?原因・症状・治療方法について解説|【医師監修】救急病院一覧あり

[2022.04.15]

目次

 

手足口病はおもに子どもが感染する発疹や発熱を伴う病気です。
手足口病は高熱になることは少ないですが口の中や手や足に発疹が出て、飲み食いができないほど痛みがでることがあります。
考えただけでも痛そうなので、なるべく軽傷ですんで欲しいものです。
重症化すると他の病気に発展する可能性もあります。
そのため、手足口病の病気の性質を知っておくことが適切にケアを行っていくうえで大切になります。
もしかかってしまったらどのような経過をたどるのか、そのケアはどうしたら良いのかなど疑問が湧いてきますね。

手足口病とはどんな特徴のある病気か、症状や必要な治療は何か、自宅でのケアや子どもと行う感染対策、保育園や幼稚園には治癒後の登園の目安はいつになるのかまで、ひとつずつ詳しく説明していきますのでご参考にしてください。

手足口病とは?

手足口病はその病気の名前が示すように、口の中や手足に水疱性の発疹があらわれるウイルス性の感染症です。
1950年代後半にこの病気が認識され、日本では1967年頃からその存在が明らかになりました。
手足口病を引き起こすウイルスの種類は多数あります。
原因となるウイルスはさまざまですが、主に、「エンテロウイルス」と「コクサッキーウイルス」が挙げられます。
これらのウイルスはノンエンベロープウイルスともいわれていて、アルコール消毒剤や熱に強いウイルスとして知られています。

感染者のほとんどが5歳未満の子どもで80%以上を占めています。
手足口病の感染は夏季に流行し、7月に感染のピークを迎えます。
熱が出ることは少ないですが、湿疹が出ることが多く、口の中、手のひら、足の裏にもできます。
感染したあとの経過は基本的に良好ですが、まれに、無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎、肺水腫、ギラン・バレー症候群などの重篤な合併症が起こる場合もあります。

感染するとウイルスに対しての免疫はできますが、他の種類のウイルスには免疫がないため、一度治っても繰り返しかかることがあります。1)2)

病原体の感染経路とは

手足口病の原因であるウィルスの感染経路は飛沫感染、経口感染、糞口感染があります。
糞口感染とは、便の中に排泄されたウイルスがなんらかの理由で口に入って感染することです。
コクサッキーA16(CA16)、CA6、エンテロウイルス71(EV71)などが原因のウイルスです。

体に入った手足口病の原因となるウィルスの便の中への排泄は長期間にわたります。
症状がなくなった患者さんも2~4週間にわたり感染源になることがあることが知られています。
特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは注意が必要です。
理由は、子ども達同士の生活の距離が近く、濃厚な接触が生じやすい環境であることや、衛生観念がまだ発達していないことから、施設の中で手足口病の患者が発生した場合には、集団感染が起こりやすいのです。
また、乳幼児では原因となるウイルスに感染した経験のない子どもの割合が高いために感染した子どもの多くが発病します。

また、腸の中で増殖したウイルスが血流に乗って全身にまわるとウイルス血症になり、中枢神経系にウィルスが到達することで中枢神経症状を起こしてしまう可能性があります。(特にエンテロウィルスであるEV71型)

いちど手足口病を発病すると、その手足口病を発症する病因ウイルスに対しての免疫は成立しますが、他に手足口病を発症するウイルスに感染すれば再度手足口病を起こすこともあります。1)2)

症状とは?

通常のエンテロウィルス、およびコクサッキーウィルスによる手足口病では3~5日の潜伏期があり、口腔粘膜、手のひら、足のうらなどの体の手先、足先に2~3mm程度の水疱性の発疹が出現します。
他には肘、膝、臀部などにも出現することがあります。
口の中の粘膜に潰瘍と呼ばれる粘膜にできる傷ができることもあります。
発熱は発病した方の約1/3に見られますが軽度で、38℃以下のことがほとんどです。
通常は3~7日の経過で水泡はなくなっていき、水疱がかさぶたを作らずに治っていきます。

稀には幼児を中心とした髄膜炎、小脳失調症、急性弛緩性麻痺、脳炎などの中枢神経系合併症を生じることもあります。
特に、EV71による場合には、中枢神経系合併症に注意する必要があります。
近年のアジア地域における重症例の多くは、エンテロウィルスEV71型による急性脳炎に伴う中枢神経合併症によるものと考えられています。

近年のコクサッキーA6による手足口病では、今までの手足口病と発疹の出現部位が違っていて、水疱は平べったくて小さな穴がある形でこれまでより大きいことや、手足口病発症後、数週間後に爪が剥がれて落ちる症例(爪甲脱落症)が報告されています。1)2)

皮膚の症状とは?

手足口病の主症状といえる皮膚症状は、口の中、手のひら、足のうらの発疹です。
その発疹は2~5mm程度の水疱と皮膚から盛り上がった皮疹がみられます。
また、口の中の粘膜にも水疱ができます。
口の中の病変は頬粘膜や舌に現れ、水疱以外にも紅斑や潰瘍がみられます。
手足口病の皮疹は通常かゆみは伴いません。
1週間前後で水疱は吸収され、淡褐色となり治ってしまいます。

口の中の痛みであるため食欲不振、よだれが多くなる症状などがみられ、乳幼児で水分が取れなくなると、脱水症状を起こし入院が必要となることがあります。

流行シーズンは、7~8月が中心ですが、近年は温暖化のために秋から冬にかけても流行がみられることがあります。

手足口病は水ぼうそうやヘルパンギーナに似ています。
専門家でも見分けが難しいため見分けるためのポイントがあります。

水ぼうそうは、同じように水疱が現れますが、体の中心である左右の手足を除く胴体部分と顔、頭皮などに水疱がみられます。
水ぼうそうはやわらかく破けやすい水疱で、手足口病の水疱は硬いということも異なるポイントです。

ヘルパンギーナは、皮膚に発疹は出ないのですが、のどの所見として口蓋垂(のどちんこ)の周辺の粘膜に水疱や潰瘍ができます。
手足口病はヘルパンギーナの部分的な発疹とは違い、頬粘膜全体に出ます。1)2)

合併症は?

手足口病の中枢神経系の合併症とはどんなものがあるのでしょうか。
髄膜炎や小脳失調症、急性弛緩性麻痺、脳炎、ギランバレー症候群などが挙げられます。
お子さまを看病しているうちに気になる症状が出てきたときは合併症を疑う必要があります。
下記にそれぞれの合併症について説明していきます。

髄膜炎とは?

手足口病と関係する髄膜炎は、無菌性髄膜炎と呼ばれ、発熱、頭痛、嘔吐の3つのおもだった症状があり、首の後ろが硬くなる後部硬直や、ケルニッヒ兆候と呼ばれ下肢を曲げ伸ばしすると痛みが生じる兆候などの髄膜刺激徴候が存在します。
髄液検査などで定型的な所見があり、原因菌の特定ができる場合により無菌性髄膜炎の確定診断となります。

病気になったあとの経過は原因となった病原体や全身状態の回復の様子に左右されます。
手足口病の原因ウィルスのひとつとなるエンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の場合には一般的に病気の経過は良好であり、完全に回復します。
生後数カ月以内の乳児の場合には、精神発達遅滞の危険因子となることもあるため、その後の経過観察が必要です。

精神発達遅滞とは、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験での学習のように全般的な精神機能に支障があることによって特徴づけられる発達障害の一つです。
発達期に発症し、概念的、社会的、実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害のことです。1)2)

小脳失調症とは?

なにかしらのウィルスや細菌の感染が先にあったり、予防のためのワクチン接種後に副反応として発症する自己免疫機序による小脳失調症があります。

小脳失調症状のあらわれる数日〜3週間前に約70~80%の患者さんになにかしらの感染があります。
有名なものは水痘です。
その他にも手足口病の原因ウィルスであるエンテロウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、エコーウイルス、麻疹ウイルス、マイコプラズマや溶連菌など多岐にわたります。

予防接種では水痘、B型肝炎、麻疹などが誘因となることが知られていますがその発生頻度は不明です。

症状にはふらつく歩行がみられたり、姿勢の維持が困難になったり、指鼻試験などで障害がでたり、うまく喋ることができない、目が細かく揺れる、などの症状があらわれます。
自然によくなっていくので経過観察となります。
約80〜90%は1~2週間以内に改善し4~8週で回復します。
重症例には下記の疾患の鑑別を行いながらステロイド療法やガンマ-グロブリン療法を考えます。
ほとんどの場合、治療をしなくても数週から数ヶ月以内に自然治癒します。1)2)

急性弛緩性麻痺とは?

なにかしらのウィルスや細菌の感染が先にあり、急性弛緩性麻痺があらわれます。
手足や呼吸をするために使う筋肉などに筋肉の緊張の低下がみられたり、筋力の低下、深部腱反射が弱くなるか、またはなくなったり、筋肉が萎縮することによる急性の弛緩性の運動麻痺症状(筋肉を動かそうとしても力が入らずだらんとしてしまう状態)があらわれます。

発症のメカニズムは同一ではないですが、手足口病の感染後に起きる同様の症状を起こすものにギラン・バレー症候群が含まれます。
急性期に一番筋力が低下してしまった日から数えて、その症状が数日から数週間続いた後に、手足の運動麻痺はある程度よくなりますが、筋力低下が残る場合もあります。1)2)

脳炎とは?

脳炎とは、細菌やウイルスが脳に感染して炎症を起こすことです。
炎症による脳のむくみのため、圧力が高まってしまって症状が起きます。

発熱とともに、頭が痛くなったり、吐いたりします。
意識がぼんやりすることやひきつけを起こすこともあります。赤ちゃんの場合は、頭の骨がまだくっついていないへこみの部分の大泉門が腫れて発見されることがあります。

ウイルス性の場合、症状が軽いことも多いですが、細菌と同じく緊急で受診が必要です。
進行すると、眠りがちになる、普段どおりの会話や行動ができないといった意識障害やひきつけを起こすことがあります。
脳炎の原因はほとんどがウイルスです。
発熱に伴って強い頭痛、吐き気、嘔吐がある場合には、この病気の可能性があります。1)2)

ギランバレー症候群とは?

急性免疫性ニューロパチーの代表的疾患であるギラン・バレー症候群は、風邪などの上気道感染や下痢を伴う胃腸炎に感染して1~2週間後に、手足の先にしびれや力の入りにくさが出てきます。
その後、数日~2週間のあいだに急速に症状が進行することが特徴です。
神経症状が出てから2~4週で症状はピークになります。

重症例では手足がきかなくなる麻痺が進んで歩くのに助けが必要になり、10数%の患者さんは呼吸をする筋肉にも麻痺が起こり、自分で呼吸ができなくなり人工呼吸器を装着することが知られています。
また約半数の人は顔面神経麻痺、複視(ものが重なってみえる)、嚥下障害(飲み込む力が弱くなる)といった脳神経障害を生じます。
頻脈(脈が速くなる)、徐脈(脈が遅くなる)、起立性低血圧(立ったときに血圧が下がる)、膀胱直腸障害(うんちやおしっこの排泄に障害が出る)といった自律神経障害を伴うこともあります。

治療をしなくても徐々に改善し始めて約半年ほどで多くの方はよくなりますが、1年後も歩行に介助を要する方が16%存在すると言われています。1)2)

治療は?

手足口病の治療方法は特になく対症療法となります。
手足の水疱に対しては、治療の必要はありません。

抗生物質などの使用による治療には意味がなく、先述した合併症を発症した場合に対しての特別な治療法もありません。

発疹にはかゆみがあることはまれなので、抗ヒスタミン剤の塗布を行うことはあっても、外用薬として副腎皮質ステロイド剤は使用しません。 手足口病にはステイロイドの多用が症状を悪化させる可能性があると言われているので注意が必要です。

口の中の病変に対しては、刺激にならないよう柔らかめで薄味であったり喉ごしの良い食べ物を勧めますが、何よりも水分不足にならないようにすることが最も重要です。
口から飲んで水分を与えることを勧めますが、どうしても痛みが強くて水分がとれないときには点滴をして水分補給することもあります。

発熱に対しては、高熱にはならないので、通常は解熱剤なしで経過観察が可能です。
もし元気がない、頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合には髄膜炎、脳炎などを起こしている可能性があるため注意する必要があります。

手足口病の感染予防としては症状があるお子さんへの接触予防策や飛まつ予防策が重要です。
特に手洗いの励行などは特に重要です。
患者さんあるいは回復した方に対しても、特に排便後の手洗いを徹底する必要があります。

なお、重症例が多く報告されている台湾および中国を中心としたアジア諸国では、実用化を目指したEV71(手足口病)ワクチン開発が進められています。1)2)

予防法は?

手足口病は口の中の粘膜と手足先に水疱の発疹が生じる病気で毎年のように流行します。
最近の日本では1985年から数年ごとに度々大きな流行を繰り返しています。
病原体のコクサッキーウイルスとエンテロウイルスの感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染です。
流行のピークは夏で感染期間中にはウイルスは咳や鼻汁から1-2 週間、便からは数週〜数か月間に渡って排出されます。

感染拡大防止法としては、飛沫感染、接触感染、糞口感染に対する一般的な予防法が必要です。
登校や登園基準は、流行を止めることを目的とした登校や登園停止は有効性が低く、ウイルス排出期間が長いことからも現実的ではないとされています。
感染者本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校や登園が可能です。
ただし特に排便後の手洗いを励行する必要があります。1)2)

手足口病の感染症法における取り扱いは?

手足口病は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされています。
報告のための基準は以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により症状や所見から手足口病が疑われ、さらに以下の2つの状況が当てはまる場合に報告が必要になります。

  • 手のひら、足のうら、または足背、口の中の粘膜に出現する2~5mm程度の水疱で、水疱はかさぶたをつくらずに治ったもの。
  • 上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により症状や所見から手足口病が疑われ、さらに病原体診断や血清学的診断によって手足口病と診断されたもの。4)

手足口病の学校予防法による取り扱いは?

手足口病は、学校で予防すべき伝染病1~3種に含まれていません。
発疹の主症状から回復した後もウイルスは長期にわたって排泄されることがあるので、急性期のみ登校登園停止を行って、学校・幼稚園・保育園などでの流行を阻止することをねらった登園や登校の停止は、効果があまり期待ができません。

手足口病の大部分は軽症の病気であり、集団としての問題は少ないため、発疹だけの患児に長期の欠席を強いる必要がなく現実的ではないと考えられています。

通常の流行状況での登校登園の問題については、流行の阻止が目的というよりも子ども本人の症状や状態によって判断すればよいとされています。4)

看護

手足口病は、基本的に軽症な場合が多い疾患ですが、口の中に発疹ができて痛みで水分が取れなくなるくらい発疹がひどくなることがあったり、重症な合併症に繋がる危険もある病気ではあるので、観察ポイントやケアのポイント、受診の目安やタイミングなどの自宅で看護するためのポイントを把握しておくと安心です。

脱水症状に注意しましょう

手足口病は脱水症状に注意しましょう。
手足口病の症状である、口の中の水泡が破れて口内炎症状が出てくると、お子さんはその痛みで食べたり飲んだりするのを嫌がる場合があります。
飲む量や食事の量が少なくなると、子どもは簡単に脱水状態になってしまいます。

赤ちゃんや、まだ言葉があいまいな乳幼児は、自分で上手に伝えることができないため、保護者の方が水分の摂取状況やおしっこの量や間隔といった情報をとっていくと良いです。
おしっこは脱水に傾くにつれ、回数や量が減り、色は薄い黄色から濃いオレンジへと変化していきます。
おしっこの回数や量、色の変化に注意するようにしましょう。

また、汗や唾液、それら以外に、人間が生きているだけで皮膚から放出して蒸発していく水分もあります。
少しは飲んでいるのに脱水傾向に陥る場合は、そういった体液の喪失も考えられるので、室温やかけものや衣服などであたためすぎて、そういった水分の喪失が多くないか考えることも脱水を考える上でのヒントにもなります。

脱水の兆候を身体から知るには、脇の下が乾燥している、口の中が乾燥している、唇が乾燥している、目が陥没して見える、頭の登頂部付近にある大泉門がへこんでいるといった兆候が現れます。
合わせて体温や脈拍の測定などからも知ることができます。

脱水症状の治療後は、元気があるか、おしっこが出ているか、脈拍数や呼吸の数が多くないかといったことから、脱水症状が改善されているかどうかを見ていくようにしましょう。3)

低血糖に注意しましょう

小さなお子さんの場合、口から食事が取れなくなることにより、脱水と同じく、簡単に糖分が足りない状態になり低血糖を起こしやすくなりますので低血糖症状にならないように注意しましょう。

低血糖状態になると、一般的には発汗がでたり、不安を訴えたり、顔色が白くなったり、脈が頻回になったりどきどきを感じたり、吐き気などが出現します。
他には、考える力が低下したり、身体の動きがのろのろしたり、呼びかけに対して反応があいまいだったり、反応がなくなったりするといった症状が現れます。
そのような症状が起きた場合は、受診して血糖値の測定について検討する必要があります。

低血糖の予防には少しでも口に入れられれば、糖分の含むものを与えると良いですが、飲めない食べれないときには早めに受診するのがよいでしょう。3)

食事の工夫をしよう

手足口病に対する特効薬はありませんが、口の中の粘膜の痛みや口内炎に対して鎮痛薬で痛みを和らげたり、粘膜保護剤の軟膏などが処方されることがあります。
少しでも食べられる場合にはその痛みが強くならないよう、食事による痛みへの負担を減らすことが必要になります。

のどに痛みがあるので、オレンジジュースなどのような刺激のあるものは避け、のどごしの良い少し冷たい飲みものがおすすめです。
例)麦茶や牛乳、冷めたスープ、ポカリなど。

食べものは、刺激が少なくかまずに飲み込める刺激の少ない食べ物にしましょう。
例)ゼリーやプリン、アイス、冷めたおじや、豆腐など。

飲み込むのが辛いときは、電解質や糖分を含むポカリなどのスポーツドリンクやOS-1などの経口補液系の飲み物を補給し、脱水や低血糖を予防できる飲み物を飲むようにしましょう。3)

発熱した場合には?

手足口病は基本的にそれほど高熱になることはありませんが、発熱して寒気や熱の上昇に伴ってふるえがある場合には、発熱に対するケアが必要になりますので、部屋を温かくして、毛布などの掛け物をたすなどして保温します。

熱が上がりきると寒さはなくなり、熱さを訴えてきたら、身体を冷ますようにします。
お子さんの場合、身体を冷やすのを嫌がる子もいますので、無理やり冷やす必要はありません。
その場合には着ているものを調整したり、寝具のかけものを減らしたり、室内の空調をコントロールして体温を調整します。

また、市販で売られている冷却ジェルシートは爽快感は得られますが、解熱効果はなく、シートがずれて口鼻を覆い、窒息する危険性があるため使用する場合には目をはなさないあどの注意が必要です。

発熱時は、発汗することがあるため、汗が乾いて身体が冷えないように身体を拭いてあげたり、汗を吸った布団で身体が冷えるのを予防するためにシーツなどの交換が必要です。
お子さんの状態を見ながら、入れる状態のときには入浴やシャワー浴で清潔を保つようにしましょう。
入浴やシャワー浴を行う場合には、長い時間になると体力を消費してしまうので、サッと入るようにしましょう。
しっかり身体の水分を拭き取り、冷えないようにしましょう。3)

子どもをみる上での観察ポイント

子どもは、成長発達の途中にあり、言葉の発達と表現するちからが未熟なため、自分で症状や辛いことをその症状に合った言葉で訴えることができません。
また、伝えてきたとしても明らかではないため、伝わりにくい場合があります。

そのため、子どもの現在おかれている身体の症状が重いか軽いかを判断するには、子どもの言ったことだけを頼りにすると情報が不足してしまったり、重要な情報を逃してしまうことがあります。
お子さんを見たようすや呼吸のようす、おしっこの量や脈拍、皮膚の色を観察しておくことが大切なポイントになります。

お子さんを観察する上での保護者の方の「なんだかいつもと違う」という感覚もとても大切です。

  • 遊ばない・・・今まで興味があったものに興味を示さない。
  • 飲めない・・・食べることができない、食べさせようとすると嫌がる。
  • ぐずって眠らない・・・または眠り続ける。

といった「3つのできない」状況があった場合、それらを子どもの示す異常サインとしてとらえることがとても大切です。3)

お子さんの状態がいつもと違うのは何が違うのか把握しておくことは、受診の際にも医師に話しておくことで診断をする上でも、とても有効な情報になります。3)

受診のタイミング

自宅で看病していたけど、気になる症状がある、またはなかなか回復しない場合には、どんな症状があれば受診を考えたらよいのでしょうか。

手足口病に特効薬はなく、特別な治療方法はありません。
また、基本的には軽い症状の病気のために、経過観察をふくめて症状に応じた治療となります。
しかし、まれに髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症などが起こる場合がありますから、経過観察をしっかりと行うことが大切です。

手足口病の経過として少し違うもので、心配になる症状は、高熱が出る、発熱が2日以上続く、嘔吐する、頭を痛がる、視線が合わない、呼びかけに答えない、呼吸が速くて息苦しそう、水分が取れずにおしっこがでない、ぐったりとしているなどの症状がみられた場合は、合併症へ移行している場合や、他の病気が潜んでいる場合もあるので受診して診てもらう必要があります。
すぐに医療機関を受診しましょう。3)

医療相談の専用電話も活用しよう

自宅で療養しているものの、なかなかお子さまの症状が改善せず、心配だけど受診させるほどなのか、または受診したいけれども夜間や休日になってしまったけどどうしたらいいかなどを悩んでしまったら、相談に乗ってくれる窓口があります。
遠慮せず早めに相談していくことが、保護者の方の負担を減らし、お子さんの重症化を防ぐことにもつながります。
医療相談の専用電話も活用していきましょう。

#8000に電話することで医療相談に乗ってくれる窓口です。
全国どこでもこの番号でかけたら対応してくれる、国の子ども医療電話相談事業です。
保護者の方が、休日夜間のこどもの症状にどのように対応したら良いのか、病院を受診した方が良いのかなど判断に迷ったときに、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。

この事業は全国同一の短縮番号#8000をプッシュすることにより、お住いの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。6)

電話ですぐに相談することができるのでとても便利です。
質問するときにはあらかじめメモ帳に質問したいことを箇条書きに書いておくと緊張せず話せておすすめです。
また、伝えておくと医師や看護師が判断できることがあるので、年齢、性別をまず伝え、今回の症状を時間を追って順番に話していくようにすると効率的です。

例)4歳の女の子です。ぐったりしているので心配で電話しました。
4月の13日頃から微熱があり、翌日から38度台の高熱が出て、元気はあり、食事もいつもの半分ですが取れていました。14日の今日も元気はあったのですが、水分も食事も口にしたがらず夕方にはぐったりしてだるそうにしています。 受診はした方が良いですか?

といった具合にお話しすると医師や看護師に伝わりやすいです。

医師や看護師はお話しをしながら年齢や性別に合わせて疑われる病気やこれから起こり得る症状を予測しながらお話しを聞き、病気の予測をたてていきます。

参考までに例をあげましたが、もしうまく話せなくても大丈夫です。
医師や看護師が順を追ってお話しを聞いていきますので安心してください。
お子さんが心配で慌てる気持ちもあるかもしれませんが落ち着いて話すようにしましょう。

感染対策を徹底しよう

手足口病は感染ルートが飛沫・経口・接触感染と多いため、公共施設でも自宅でも注意が必要になることが多くあります。
感染を広げないようにするためには、一体どのようなことに注意して対策すればよいのでしょうか。

手足口病には有効なワクチンはなく、また手足口病の発病を予防できる薬もありません。手手足口病のウィルスは治った後でも、比較的長い期間、便などからウイルスが排泄されることがあります。
また、感染しても発病はせずにウイルスだけを排泄している場合があります。

これらのことから、発病した人だけを長期間隔離しても有効な感染対策とはならないうえ、現実的でもありません。
前述したように、衛生的な観念がまだ発達していない乳幼児の集団生活施設では、施設内での感染の広がりを防ぐことは難しい状態です。

しかし、手足口病は、発病しても、軽い症状だけで治ってしまうことがほとんどであるという意味では感染してはいけない特別な病気ではありません。
これまでほとんどの人が子どもの間にかかって、免疫をつけてきた感染症なのです。

手足口病の感染経路は、飛沫感染、糞口感染、接触感染なので最も重要な感染防止対策は、手指衛生になります。
手指衛生は、石鹸と流水による手洗いを基本として、エタノールが含まれている手指消毒剤を用いることで、ウイルスの不活化効果が期待できます。

一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することです。

特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員と子ども達が、しっかりと手洗いをすることが大切です。
特におむつを交換する時には、便などの排泄物を適切に処理し、そのあとはしっかりと手洗いをしてください。

手洗いは流水と石けんで十分に行ってください。
また、タオルの共用はしてはいけません。
手足口病は、治った後も比較的長いあいだ便の中にウイルスが排泄されますし、また、感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあると考えられることから、日頃からのしっかりとした手洗いが大切です。

適切な手洗いは手首の上まで、できれば肘まで、石鹸を泡立てて、流水下で洗浄しましょう。
手を拭くのは個人持ちのハンカチや布タオルあるいはペーパータオルが望ましいです。
ハンカチや布タオルを使用する場合は共用を避けましょう。
個人持参のタオルをタオル掛けに掛ける場合には、タオル同士が密着しないように間隔を空けて使用しましょう。

尿、便、血液、唾液、眼やに、傷口の浸出液などの体液に触れた場合は、必ずきちんと手洗いをしましょう。
石鹸は液体石鹸が良いですが、容器の中身を詰め替えるときには、残った液体石鹸は捨てて、容器をよく洗って乾燥させてから、新たな液体石鹸を入れるようにしましょう。1)2)3)

嘔吐物・便 の取り扱い

手足口病は嘔吐物や便の取り扱いの際に、空気中に舞ったウィルスから感染することがあるため、嘔吐物や便の取り扱いに注意が必要です。

嘔吐物は、ゴム手袋、マスクをして、できればゴーグルを着用し、ペーパータオルや使い古 した布で拭きとります。
拭き取ったものはビニール袋に二重に入れて密封して、廃棄します。
嘔吐物や下痢便のついた衣類などは廃棄するか、0.1%次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒しましょう。
消毒剤の噴霧は効果が薄く、逆に病原体が舞い上がり、感染の機会を増やしてしまうため、行わないほうが良いです。

処理後、石鹸、流水で手を洗いましょう。
感染しているが無症状の方は自分自身が病原体を排出していることに気付かず感染源となることがあります。
このため、下痢でなくとも排便後の手指の衛生管理には注意を払いましょう。

おむつ交換は、食事をする場所等と交差しない手洗い場のある一定の場所で実施しましょう。
おむ つの排便処理の際には、使い捨て手袋を着用しましょう。
オムツ交換の、特に便処理後には石鹸を用いて流水でしっかりと手洗いを行いましょう。
交換後のおむつはビニール袋に密閉した後に蓋つき容器等に捨てましょう。
保管場所は適宜消毒しましょう。

子どもに対する基本的な感染防止対策では、遊具を個人別にするといった対応も必要です。
おもちゃを使ったあとの消毒も有効です。1)2)3)

子どもが自分で行う感染対策への働きかけ

お子さんが幼児期、1歳~5歳くらいであれば、基本的生活習慣を学んで身につけ、清潔行動を獲得していく時期にあるため、感染防止対策の必要性や方法を伝え習得していくことができます。
自身で行うことで、より感染のリスクを下げることができます。
しかし、発達段階に合わせたかかわりで教えていくことが大切です。

幼児期前期の子どもには、教えるというより養育者が手本を示し、子ども自身が「真似をしたい」と思えるようなかかわりが必要です。
そのためには、保護者や保育を行う保育者の子どもへのかかわり方が重要になります。

幼児期後期には清潔のための手洗いなどの行動が自立して行えるようになります。
子ども自身が「健康の保持・増進のために行う」という目的を持って清潔行動が行え、習慣化できるようになることが大切です。

幼児前期は1歳6か月から3歳くらいの時期です。
この時期には自律性が育まれていきます。
言葉を話したり歩いたりするようになり、成長が早ければ走ったり何かを拒否するような反応を起こすこともあります。
これまで親や周囲にしてもらっていた着替えや排泄、食事などをどんどん自分でできるようになり自律性が養われます。
この時期になったら、子どもに食事をする方法を教えたり、排泄、着替えなどと、自分でやってみる機会を積極的に与えたりしましょう。

反対に、この時期になっても子どもに何もさせず親がすべてしているようでは、子どもの自律性は育ちません。
また、せっかくチャレンジしても失敗してしまった場合、必要以上に叱りつけると余計に子どもは萎縮してしまいます。
新しいことに挑戦しようという気持ちが弱まってしまう可能性もあります。
挑戦したことを褒め、子どもの気持ちが次のチャレンジにつながるように働きかけることが大切です。

3歳から5歳くらいの時期を幼児後期と呼びます。
この時期には自発性が生まれ発達していきます。
幼稚園や保育園に行く子どもも増えて、親の元以外で過ごす時間が多くなります。
すると自分から遊ぶものを見つけたり、友達に話しかけたりするようになっていきます。
自発的に何かしらの行動を起こすようになったら、間違った方向に自発性を発揮しないように見守りつつ子どもに反応してあげます。
この時期に子どもの自発性を無視して適当にあしらっていると、子どもは罪悪感を抱きやすくなります。
自己肯定感を下げてしまうことにもつながりますのでしっかり子どもに反応してあげるようにしましょう。

子どもにも感染対策を実施し、身につけてもらうことで感染リスクをさけていくことは大切です。
子どもの発達段階を理解したうえで、うまく清潔行動を身につけていけると良いですね。3)

手洗い

手足口病の感染予防対策には正しい手洗いの方法が有効であることがわかりました。
正しい手洗いの方法を身につけて感染対策をしていきましょう。

正しい手洗いの方法
  1. 両方の手のひらを開いてすり合わせ、よく洗う。
  2. 手の甲を伸ばすようによく洗う。
  3. 指先、爪の先をよく洗う。
  4. 指と指を交差させながら指の間を十分に洗う。
  5. 親指と手掌をねじり洗いする。
  6. 手首も洗う。
  7. 水道の栓を止めるときは、手首か肘で止める。できないときはペーパータオルを使用して止める。1)5)

登校・登園の手続きとは?

手足口病は、学校や幼稚園、保育園ではどんな感染症の取り扱いになっているのでしょうか、また登校・登園再開にはどんな手続きが必要になるのでしょうか。

学校保健安全法の取り扱いでは、手足口病は第三種その他の感染症に含まれています。
登園・登校については、日本小児科学会の「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」で「本人の全身状態が安定している場合は登校(園)可能である」とされています。
ただし、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、解熱後 1 日以上経過することとの記載があります。

手足口病における登園の目安とは、熱が平熱に下がって24時間以上経過していて、口腔内の水泡・潰瘍の影響がなく、夜間よく眠り、普段の食事を食べ、活気のある状態と言えます。

小学校や保育園、幼稚園に登校・登園許可証などが必要になる場合もありますので、受診して医師の診断が必要なのか、所定用紙に記載するだけで良いのかはその登校・登園している施設によって違うので必ず確認しましょう。
登校・登園している施設の方針に合わせて対応するようにすることが大切です。1)4)

まとめ

手足口病を引き起こす原因となるウイルスはエンテロウイルスとコクサッキーウイルスです。
感染者のほとんどが5歳未満の子どもで80%以上を占めています。
手足口病の感染は夏季に流行し、7月に感染のピークを迎えます。
熱が出ることは少ないですが、発疹が出ることが多く、口の中、手のひら、足の裏にもできます。
手足口病に対する特効薬はありませんが、口内炎に対して鎮痛薬で痛みを和らげたり、粘膜保護剤の軟膏などが処方されることがあります。

感染したあとの経過は基本的に良好ですが、まれに、無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎、肺水腫、ギラン・バレー症候群などの重篤な合併症が起こる場合もあります。
合併症の兆候が見られたり、気になる症状や、いつものお子さんの様子と違う、と思うことがあれば#8000の医療相談窓口に電話して相談したり、受診して診てもらいましょう。

口の中の症状で痛みが強く出る場合があるので、食べものは刺激が少なくかまずに飲み込めるものにしたり、飲み物も刺激のあるものは避けて、のどごしの良い冷たい飲みものを与えましょう。

手足口病には有効なワクチンはなく、また手足口病の発病を予防できる薬もありません。治った後でも、比較的長い期間、便などからウイルスが排泄されることがあります。
また、感染しても発病はせずにウイルスを排泄している場合があります。

衛生観念がまだ発達していない乳幼児の集団生活施設では、施設内での感染の広がりを防ぐことは難しいため感染予防が大切になります。

手足口病の最も重要な感染防止対策は、手指衛生です。
手指衛生は、石鹸と流水による手洗いを基本とし、エタノール含有の手指消毒剤を用いることで、ウイルスの不活化効果が期待できます。
接触感染を予防するためには、手洗いをしっかりとすることと、特にオムツ交換をするときには排泄物を適切に処理することが大切です。

幼児期の子どもは基本的生活習慣を学んで身につける時期であり、その行動の中に、清潔行動を会得していく、ということも含まれています。
保護者や保育者が子どもの発達段階に合わせたかかわりを意識しながら子ども自身が自立して手洗いなどの清潔行動を身につけていくことが、感染対策にとっても大切になります。

手足口病に感染してしまったら、その後症状が良くなって登校や登園ができるには、熱が平熱に下がって24時間以上経過していて、口腔内の水泡・潰瘍の影響がなく、夜間よく眠り、普段の食事を食べ、活気のある状態になることが必要です。
あらかじめ登校・登園再開の条件や書類の提出の必要性などを登校・登園している施設に確認し、その方針に従うことが大切です。

子どもが感染する病気として一般的なものですが、重症化など気をつけて観察したい点や、留意しておいたほうが良い感染対策もあります。
もし手足口病にかかっても周囲に広げないよう、はやくよくなりますよう参考にしていただけたら幸いです。

参考文献

  1. 手足口病 厚生労働省
  2. 手足口病 国立感染研究所
  3. 手足口病の看護 看護roo
  4. 感染予防法「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 2021 年 6 月改  日本小児科学会 
  5. 「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」厚生労働省
  6. 子ども医療電話相談 厚生労働省

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