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ステルスオミクロンと呼ばれる「BA-2型オミクロン株」にはどんな特徴がある?

[2022.04.27]

目次

 

以前はデルタ株が主流だった新型コロナウィルス感染症ですが、現在の主流はオミクロン株になりました。
ウィルスは感染が広がるうちに細胞が変化して、少しずつ違う亜型が出現していきます。
BA-1型のオミクロン株も感染が拡大するうちにBA-2型のステルスオミクロンと呼ばれるオミクロン株に変化していきました。
現在海外で広がるBA-2型、通称ステルスオミクロンは空港の検疫では認識されていたものの、国内で渡航歴のない人からのBA-2型の感染が発見され、市中感染の疑いが持たれています。
そしてその市中感染によるステルスオミクロンと呼ばれるBA-2型の広がりが第7波につながるのではとその感染状況が懸念されています。

このステルスオミクロンは一体どんな特徴を持っているのでしょうか。
今までのデルタ株やオミクロン株とどのように違っているのでしょうか。
ステルスオミクロンの特徴、症状、感染力、重症化、ワクチンの効果などについてまとめました。

「BA-2型オミクロン株」通称ステルスオミクロンの由来とは?

「BA-2型オミクロン株」通称ステルスオミクロンというのは海外メディアがつけた名称で、現在流行っているオミクロン株BA-1型の亜型であるBA-2型のことを指しています。

BA-2型、通称ステルスオミクロンのステルスの意味は隠れる、隠すなどの意味合いがありますが、もとは軍事用語として使われていました。
BA-2型を検出する検査で判別がつきにくかったそのBA-2型の特徴をとってステルスオミクロンと名付けられたようです。

国の主要な感染症研究機関ではステルスオミクロンの名称では使われていません。
新型コロナウィルス感染症に対して用いられる、国際的な系統分類命名法の、変異株の呼称として用いられるPANGO系統では、ステルスオミクロンは新型コロナウィルス感染症または、BA-2と呼ばれ、WHOでは、変異株、オミクロンと呼ばれています。

今までのオミクロンとステルスオミクロンのちがいとは?

では、ステルスオミクロンと呼ばれるBA-2型は、今まで流行していたオミクロン株BA-1型とどのように違っているのでしょうか。
症状、感染力、重症化、ワクチンの効果についてみていきましょう。

ステルスオミクロンの症状とは?

国内の空港検疫で監視されているステルスオミクロンと呼ばれるBA-2型の症状は、BA-1型と大きく変わりはありませんでした。
無症状が多く、ついで発熱、咽頭痛があり、同等に頭痛が見られます。
咳や倦怠感を訴える方も少数います。
下痢はごくわずかでした。
ただし、空港検疫で感染が発見された人は20歳代が多く、ついで30歳〜40歳代、その次に10歳代と50歳代、最後に0〜10歳と60歳以上の方で少数でした。

東京医科歯科大学の武内寛明准教授は、海外の一部の国で広がるオミクロン株の系統の1つであるBA-2型に感染し、同病院で治療を行った患者のゲノム解析を行いました。
日本で主流となっているオミクロン株のBA.1型との違いを分析しました。
その分析の結果「ウイルスが人間の細胞と結びつく鍵となるスパイクたんぱく質に、従来のオミクロン株と同じように変異があったものの、変異する箇所がいくつか異なっているのを発見した。」
「変異箇所が異なる場所に、BA-2型の感染の伝播性が優位となることを決める変異があるのではないか。BA-1型とBA-2型の株の違いを慎重に見ていく必要がある。」としています。

さらに「解析を行った患者は65歳未満であり軽症だったものの、海外への渡航歴がなく、感染経路が分からず、市中感染の疑いがあると考えられた。
BA-2型の市中感染の始まりに近い状況が起きつつあり、オミクロン株による第6波の収束に影響を与える可能性が否定できないため、第6波を長引かせないためにBA-2型の市中での流行を食い止める必要がある。」としています。

国際医療福祉大学ゲノム医学研究所 辻省次所長は、「BA-2型の感染力は強いと言われているので、感染への対策は積極的に行う必要があるが、調べた22人では3人が無症状で19人が軽症で中等症以上の方はいなかった。
現在感染が広がってるBA-1型と症状として大きな違いはなく、治療方針自体に変わりはないのではないか。」としています。

空港検疫と国内のBA-2型感染者から得られたゲノム解析の分析結果からも、症状は現在流行しているオミクロン株のBA-1型と大きく違いはなさそうだということがわかりました。

ステルスオミクロンの感染力とは?

では、ステルスオミクロンの従来のオミクロン株と比べて感染力は変わっているのでしょうか。
ステルスオミクロンの感染力は今までより高いとされています。
感染力は高くなり、潜伏期間は短縮し、発症間隔も短縮しています。
感染しやすくなるため、ひとりが感染するとそこから広がる2次感染も起こりやすくなります。

第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてのお知らせによると、ステルスオミクロンの感染力について以下のように説明されています。

「海外の一部地域ではBA-2型系統による感染が拡大していて、現在もBA-2型系統への置き換わりが進んでいて、BA-2型系統はBA-1型系統との比較において実効再生産数※及び二次感染リスク等の分析から、感染性がより高いことが示されている。
BA-2系統の世代時間は、BA-1系統と比べ15%短く、実効再生産数は26%高いことが示された。」とされており、ステルスオミクロンの感染力がBA-1型オミクロン株より高かったことが報告されています。

※実効再生産数とは

感染拡大を防ぐ努力が行われていたり、すでに免疫を獲得している人がいたりする集団の中で、平均で何人にうつるかを導き出す指標です。
時間と共に数値も変化していき、実施した感染症対策などの効果の評価や、感染状況の未来の動向を予測するための要素の一つとして利用されています。

ステルスオミクロンの重症化について

次に、ステルスオミクロンの重症化についてみていきます。
ステルスオミクロンの重症化リスクは低下または差はないとされています。

前述の厚生労働省の報告によるアドバイザリーボードによれば「BA-1型系統とBA-2型系統との重症度の比較については、動物実験でBA-2型系統の方が病原性が高い可能性を示唆するデータもあるが、実際の入院リスク及び重症化リスクに関する差は見られない。」とも報告されています。

国立感染症研究所によると、デルタ株と比較してオミクロン株では、重症化のリスクは低下したと示されていますが、ワクチン未接種、基礎疾患等の重症化リスク因子を持っている場合には、ウィルス性肺炎や基礎疾患の悪化などの要因により死亡してしまうということもあり得ます。

国内の重症例や死亡例は高齢者が多くを占めるので、高齢者の感染者が大幅に増えることで重症化リスクの低下する率が相殺されることには注意が必要です。

ステルスオミクロンについて、重症化・死亡のリスクの増加はないものの、今後の知見の集積も必要とされています。

デルタ株よりも下がったオミクロン株の重症度ですが、ステルスオミクロンの重症度は横ばいと考えて対応した方が良さそうですね。

ステルスオミクロンにはワクチンの効果はある?

最後に、ワクチン接種によるステルスオミクロン感染予防の効果はどうなるのかみていきましょう。

現在のBA-1型系統のオミクロン株には、ワクチンを2回接種しても、発症、重症化予防効果がデルタ株を予防できたものと比較して、低下しているとみられています。

入院や死亡を含む重症化予防効果は感染を予防する効果とくらべるとその効果は横ばいです。
いずれの予防効果も3回目のブースター接種により高くなりますが、その効果が今後も継続していくかについては不明とされています。

ワクチンのブースター接種とは、ワクチンの効果を高め、持続させるために行う接種のことです。

また、前述の厚生労働省の報告によるアドバイザリーボードによれば「英国の報告では、ワクチンの予防効果にも差がないことが示されている。
英国の報告では、BA-1型系統のオミクロンの感染後におけるBA-2型系統ウイルスに再感染した事例は少数報告されているが、これらの症例の詳細についてはまだ明らかとなっていない。」とされています。

ステルスオミクロンに対するワクチンの効果については、まだ症例の報告数が足りずはっきりしない印象があります。
しかし、ブースター接種については効果が高まることが予想されています。

まとめ

ステルスオミクロンとは、海外の一部地域で広がりをみせているBA-2型系統のオミクロン株のことです。

ステルスオミクロンは、主に感染性や重篤度が増す、ワクチン効果が減弱するなど性質が変化した可能性が明らかな株であると認識され、主な主要国の感染症を管理する主要機関(日本国立感染研究所、WHO、英国HSA、ECDC、CDC)でもBA-2型のオミクロン株に関し同様の見解を示しています。

ステルスオミクロンは、週単位での検出数の公表や、国内検疫での感染状況の監視、積極的疫学調査などを行うことにより監視し、対応されています。

その多方面からの監視や研究などの分析の結果から、症状は現在流行のオミクロン株BA-1型とおおきく変わらないが、ステルスオミクロンの方が感染力や広がる力は強いこと、潜伏期間は短くなり、発症間隔も今までより短縮することがわかりました。
感染力が強くなるので、ひとりに感染したあと他の人に広がる2次感染率も上昇します。

ワクチンの効果は、今後その効果が持続していくかは不明ですが、3回目を受けるブースター接種により予防効果が期待できそうです。

日本国内でもステルスオミクロンの市中感染が増えており、ここから第6波が落ち着く前にステルスオミクロンによる第7波へ繋がるのではと懸念されており、今までと同様、またはステルスオミクロンの感染力の高さを留意した感染対策が必要になります。

ステルスオミクロンの特徴とも言える「強い感染力」に対し、感染が広がりを見せたときに私たちがどれくらい感染対策をとれるかが、このステルスオミクロンの感染拡大を予防する鍵になりそうです。

参考文献

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